シルビオ・レイテ氏のスペシャルティコーヒーカッピングセミナー
SCAJカンファレンスを終え、たくさんの感動をひとしきり噛みしめつつ、SCAJテクニカルスタンダード委員会主催のシルビオさんのセミナーに参加してきました。会場はいつもの東京タワーの麓、士厨司会館。
さて、シルビオさんはブラジルスペシャルティコーヒー協会の品質顧問であり、また、伝説のカッパーのお一人。1999年はじめて開催されたカップ・オブ・エクセレンスで国際審査に携わって以来、同国際審査において各国のヘッドジャッジを歴任されています。2007年ニカラグアで開催されたカップ・オブ・エクセレンスにはじめて審査員として参加させていただいたときヘッドジャッジを務められ、この時にはじめてお会いしました。緊張感でぱんぱんのところを「ヨコイサン ファーストタイムネ ガンバッテ!」と声をかけてくださり、大変お世話になりまして以来、彼の気配りのさりげなさや自分にはない人としての魅力に大ファンになりました。今回は林専務理事の通訳で行われましたが、専務理事も伝説のカッパーのお一人で、関根委員長も同じく伝説のカッパーであります。
今回をもってシルビオさんのセミナーは4回目とお聞きいたしましたが、今回はかなり嗜好を変えた内容になっており、ちょうどここ最近のカップ・オブ・エクセレンスのカリブレーション(味の摺り合わせ)に限りなく近い方式で進められました。
その方法はカップ・オブ・エクセレンスのヘッドジャッジ、ポール・ソンガーさんが考案された方法によるもので、今年5月に参加したホンジュラスのカップ・オブ・エクセレンスではじめて経験しました。
では、どういう感じに行われたかと云いますと。
クエン酸などを用い酸の質の違いや口に含んだときの質感を見ていくものです。
◆酸の質
1.クエン酸
2.1に少量の砂糖を加えたもの
3.1+リンゴ酸+酒石酸
4.3+少量の砂糖を加えたもの
以上で酸の質を擬似的に善し悪しを体験します。
◆欠点
5.カリウム(辛みに起因する)
6.トニック(渋みに起因する〜アストリンジェント)
◆マウスフィール(口に含んだときの質感)
7.4+メチルセルロース
8.グリセリン
ことにこのマウスフィールは中々難解で欠点に起因する質感をプラスで取ってしまうことがあり、毎日の仕事において、繰り返しのトレーニングが必要です。やはり、慣れることよりも繰り返し基本を学ぶことだと思います。
以上はトレーニングの繰り返しによって身につけて行くわけですが、セミナーの中で印象的だったのは「よいカッパーの条件は味の記憶と引出が多いこと、つまり、右脳が働きが旺盛であること」おお、なるほど!と納得。※酸味の質やマウスフィールを見ているところです。
で、さっそく実際にサンプルとなるコーヒーを使ってそれらを体験します。
粉の状態で香りをチェックしますが、これを「ドライ」と云います。次ぎにお湯を注いで、香りをチェック。これを「クラスト」と云います。注)お湯を注いでいる画像はホンジュラスCOEのもの。
次ぎに4回かき混ぜて、香りをチェックします。これを「ブレイク」と云います。ここまでの3つの香りのチェックは加点しませんが、評価する上で大事な情報となります。大川のあだち珈琲の安達さん!
カップの表面に浮いたアクを取り除き、いよいよカッピングです。
カップ・オブ・エクセレンスでは50分かけて審査していきます。評価項目は8項目あり、好き嫌いではなく客観的に見ていきます。カップクオリティのきれいさ(クリーンカップ)甘さ(スイートネス)酸の質(アシディティ)口に含んだときの質感(マウスフィール)風味特性(フレーバー)後味の印象度(アフターテイスト)ハーモニー・均衡性(バランス)総合点では唯一、好き嫌いを表すことが出来ます。(オーバーオール)カッピングフォームに記載していきます。はい、神経を集中させてぇ。博多のハニー珈琲、井崎さん!
みんなで今度はカップ毎にディスカッションして行きます。ヘッドジャッジは審査員の評価結果を黒板(COEではコンピュータをスクリーンに投影して行う方法が主流)に記載し行きます。
とまぁ、カップ・オブ・エクセレンスの国際品評会のあらましを含め、今回のセミナーの様子をご紹介しました。セミナーや品評会もボランティアスタッフの方々のお手伝いによって成り立っています。
カッピングをしますとやはりお腹が減ります。かなり...ということで、最終フライトまでのほんの短い時間、小走りで浜松町に向かい最寄りの居酒屋さんで空腹を満たし羽田へ直行。4泊5日の出張を終えました。
セミナーを振り返ってみて大変興味深かかったトレーニングは焙煎方法による風味の違いをカッピングで確認するものでした。同じ素材であることを知らされずカッピングした4つのブラジルコーヒーを評価すると、自分の評価で100点満点中12点も差があったんです。種明かしを聞いてびっくりしました。焙煎行程の違いもありますが、焙煎時間だけで云えばも19分も違うものがありました。
素材はもとより、焙煎行程と焙煎時間で風味特性や印象が大きく左右されることは認識してはいたものの、エスプレッソ・ブレンドチャンピオンシップで学んだことと重なり、益々、カッピングと焙煎行程の重要性を再確認できたことは大きな収穫でした。
今回はコーヒー屋さんの匂いがぷんぷんした内容で、ちんぷんかんぷんのところがあったかと思います。どうか、ご容赦を。
さ、間もなく中央アメリカやアフリカからまた素晴らしいコーヒーが届きます。順を追ってご案内いたします。お楽しみに!
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