エルバスを後にした私たちが向かった先は、すぐ隣のハイメ・カルデナスさんのマイクロミル、シン・リミテス。
シン・リミテスは2008年のカップ・オブ・エクセレンスの2位入賞の他、複数回入賞経験があります。また、このマイクロミルで処理された別の農園も入賞を経験しています。
このシン・リミテスをはじめて焙煎したのが、2006年の初夏の頃だったと思います。当時、一緒に買い付けた他のコーヒーとは明らかに異なる個性的な風味に驚いたことをよく覚えています。
黒蜜のような甘さの中に熟したフルーツの風味が混在していたからです。その翌年、シン・リミテスの隣りに位置する、エスバスをはじめて買付しました。その距離、わずか数㎞しか離れていないことを随分後に知りました。
一般的な感覚ですと、そこまで隣接した畑であれば似たような風味を持つのだろう...と想像しがちだと思いますが、そこがスペシャルティコーヒーの大きな魅力なのです。
生産されるエリアが近くても、土壌(ミネラル分)、気候、標高、気温や降水量の違い、いわゆる、マイクロクライメイト(微小気候)の違いや品種によって、コーヒーの風味が異なります。更に云えば、コスタリカのように生産処理工程の違いによっても風味特性が異なるので、言い換えれば、マイクロミルの数だけ、コーヒーが植えられている場所の数だけ、魅力的なコーヒーが存在するんです。
大規模な処理場(メガミル)からマイクロミルへと変革を遂げ、バリスタの世界大会をはじめ、世界のコーヒーバイヤーが認める、素晴らしいコーヒーを生産する「革命」を起こしたのがコスタリカのマイクロミルだと思います。
そして、エルバスからシン・リミテスまでの移動時間のほんの数分間にこれらのことが駆け巡ったので、「ハイメさんに会える!」と、思うと強い憧れと共に胸が高鳴り、なんとも云えない緊張感を感じたのはいくつかの理由がありました。
その一つに、丸山珈琲の丸山さんが「素晴らしいコーヒーに出会った」と、その時の様子を話してくれたことにはじまり、出会いから買付までの道のりを共有し、実際にこれまでハイメさんのコーヒーに触れ、体験してきたからです。
(詳しくは丸山さんの著書、「コーヒーの扉をひらこう」に書かれています)
そして、もう一つは、私が心から尊敬する丸山珈琲の中原バリスタが2010年ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)、ロンドン大会でハイメさんのコーヒーを使用し、生産者、バイヤー、焙煎人、バリスタへと渡される「バトン」という名の一杯のドリンクの素晴らしさを教えていただいたことにあります。
そして、更には丸山珈琲の鈴木バリスタもハイメさんのコーヒーを使い、素晴らしいシグネチャードリンクをもって2011年のWBC、コロンビア大会でで5位入賞されました。(翌年のジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)でも優勝を手にされ2年連続のチャンピオンに輝き、6月にウイーンで開催されるWBCに出場されます)
私にとってそんな思いが一杯に詰まった、シン・リミテスの訪問だったのです。
メナさんが私を紹介してくれているところです。万感の思いを込め、「ハイメさん、はじめまして....」
ハイメさんの隙のないオーラに緊張感が走る。
収穫を終え、処理されたコーヒー(ペルガミーノ)を見せていただくことに。
ご覧のように粘液質(ムシラージ)を残して乾燥処理をしたペルガミーノは手に付着し、香りはキャラメルやハチミツのような風味を持っています。
このムシラージの残し具合によって様々な風味が生まれ、イエローハニーやレッドハニーに分類され、それらをハイメさん独自の方法でブレンドし、シン・リミテスの素晴らしいロットが生み出されます。
シン(無い)リミテス(限界)=まさに、限界がないとい無限さを感じます。
「すごいでしょ、橫井さん」と話す、丸山さん。
今年も私たちのためにとても細かい処理を重ね、素晴らしいコーヒーを用意してくれていました。エクシクルーシブコーヒーでのカッピングの様子は改めてお伝えします。
この後、ミルのすぐ上にある、ハイメさんのお宅にお邪魔しました。それにしても素晴らしい眺めです。
奥様のマイベルさんとお子様。
ハイメさんからもたくさんのサンプルをいただき、ハイメ犬に見送られ、次のマイクロミル、ヘネシスに向かいました。続く!